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下園雄輝と高原秀平による「渦」を巡る展覧会「メエルシュトレエム」を開催いたします。

本展は「渦」をテーマに、二人を渦巻く様々な視点を「あをば荘」「float」という二つの会場で多面的に紹介するものです。共に京都精華大学を卒業し、それぞれ日本画/洋画という異なるバックグラウンドを持つ二人に共通するモチーフが、本展のテーマでもある「渦」です。

 

下園は、大学卒業後、デュッセルドルフへの留学で相対的に日本という土地への思索を深めていきます。彼が日本に帰国後に選んだモチーフが雲、雷、竜巻などの自然現象でした。そして日本という土地の自然環境から生じる風土や信仰のあり方への関心から「渦」というモチーフに行き着き、現在は ドローイングを中心に制作を続けています。

 

一方、高原は同じく自然や風景などをモチーフとし、グーグルマップや、衛星写真などの客観的な「遠い」視点を、自らの視点と重ね合わせながら制作を進めてきました。高原のモチーフとしての「渦」には、気象衛生から見た台風を描いた「台風の眼」(2015)があります。気象衛星から見た俯瞰的な台風を、その距離と自身の眼との間を行き来しながら描いています。

 

二人の作品制作における距離感を端的に言い表すと、下園は対象の中心へと迫るように、高原は遠く眺めながら観測するように絵画を制作していたと言えるかもしれません。しかし、それは両者の一視点でしかありません。近年では、下園はドローイングを通した定点観測的な視点に、高原はより近視的で抽象的な観測視点へと向かっています。かつて、エドガー・アラン・ポーは小説「A Descent into the Maelström」(邦題:メエルシュトレエムに呑まれて)の中で、大渦に呑み込まれたある漁師の視点の変化を描いています。彼は渦の中心へと呑まれるにつれ、次第に恐怖の感情から、その渦そのものへ関心を抱き始めたと言います。観察と想像の間、回る世界の渦を二つの視点の往還から捉えることが、この世界で生きる一つの活路に繋がるのではないでしょうか。

 

二人の作家のこれまでとこれからが混ざり合う展覧会となります。皆さまぜひ、足をお運びください。

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